やはり紙の教科書か?!

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 9月23日の読売新聞の1面に「教科書『デジタルのみ』3%」と大きく報道されており、3面でも詳しく解説されていた。この調査結果は、文科省ではなく財務省の調査である。データ元は、財務省の予算執行調査資料であり、その項目の中で文科省が関わるデジタル教科書普及促進事業の調査だ。財務省としては、予算執行に対する効果検証をする意図があったと思う。金を出している財務省としては当然だろう。その結果が、以下のとおりである。

 上のグラフからわかるように、デジタル教科書の使用頻度は、「4回に1回未満」が圧倒的に多い。ほとんど使用していないか、たまに使うというのが実態だろう。更に、デジタルか紙かの教科書の使用状況を調査した結果が、下のグラフである。

 このグラフの結果が、読売新聞の見出しの「教科書『デジタルのみ』3%」になっており、併せて「『紙と併用』88%」になっているのである。財務省としては、予算を付けて執行しているのに、「なんだ、デジタル教科書は使われていないのではないか、これではデジタル教科書に予算を付ける意味がない」と言いたいのだろう。逆に、文科省はデジタル教科書の使用を推進したいがために、この調査結果には苦々しい思いだろう。
 教員にとって、デジタル教科書はどれだけ使い勝手が良いのだろう。それを示したのが、下のグラフだ。デジタル教科書を毎回利用しない理由である。回答対象者が949人で複数回答である。この結果によると、回答者の552人、949人中58.2%が「デジタル教科書の機能を使わない場合は、紙の方が使いやすため」と答えているのだ。長年、紙の教科書で授業をしてきた教員からすると、当然の結果であろう。

 だが、デジタル教科書の方が、学習効果があるというならば、紙の教科書の使い勝手が良くても、デジタル教科書を使う方が良い。教員も努力をしなければならない。ところが、デジタル教科書が学習に効果があるという学術的研究はあまりないのだ。どちらかと言えば、紙とデジタルを比べても効果に差はないとか、逆に紙の教科書の方が学習効果があるという研究もあるのだ。今回の読売の報道にも東大の研究チームの研究が紹介されていた。

 6月の財務省の調査結果が、なぜ今頃大きく取り上げられているのか。おそらく予算編成に絡む財務省の文科省への反撃だろう。財務官僚が「このデータを取り上げてくれ」とリークしたものと思える。この間、文科省は教員の働き方改革をはじめ、様々な取り組みについて例年以上の概算請求をしている。前にも言ったが、文科省はエビデンスデータを示すのがうまくない。財務省としては、まずは文科省の弱点であるデジタル教科書の推進事業について、「成果は上がってませんよね!」と先制パンチを打ったのだろう。

 一方、文科省は、デジタル教科書推進に前のめりである。ちょっと怪しい。効果検証も不十分なままこのような事業を進めるのには、何か裏があると思った方がいい。一番に疑われるのは、デジタル業界との癒着である。こんなことはあってほしくないが、何か月後かに「贈収賄容疑で・・・」と報道されるかもしれない。教育を食い物にする奴らが、もしいるとしたらそれはとんでもなく許せないことだ。


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