やはりプーチンはビビリだ


 マクロン大統領のウクライナ派兵に一歩踏み込んだ発言に対して、さっそくプーチンが反応した。マクロン大統領の発言は、ウクライナ派兵について、半歩程進んだ発言で、NATO各国に「派兵を検討しよう」と呼び掛けたものではない。派兵も選択肢として排除されてはいないと述べただけだ。それにも関わらず、プーチンは核も含めて年次教書で欧米を威嚇してきた。かなり神経質になっている。
 ウクライナ戦争では、確かにロシアは優勢だ。ウクライナが防戦する形に逆転した。しかし、大局的にはどうだろう。フィンランド・スウェーデンのNATO加盟で、かなりロシアは追い込まれている。バルト海が「ロシアの海」から「NATOの海」に変わり、ロシアの飛び地であるカリーニングラードの軍事基地が十分な働きができなくなった。さらに、1300㎞の国境を接するフィンランドがNATOに加盟したことで、バルト三国の後方支援が明確になったのである。バルト三国への侵攻は、ほぼ不可能になったと言えるだろう。もしロシアがバルト三国に侵攻しようものなら、NATOが一斉にその防御を支援する。ロシアの敗北は明白だろう。欧州の地政学的勢力図が大きく変わったのだ。

 プーチンの年次教書では、この北欧2か国のNATO加盟については触れていない。触れられないのだ。ウクライナ侵攻を3日で終わらせようとしたプーチンにとって、3年目に突入したこの戦争は、明らかに誤算である。3年目に突入した副産物が、北欧2か国のNATOへの加盟だからだ。核による威嚇を持ち出さなければならなくなったということは、プーチンは最終カードに手をかけざるを得ない状況になったということである。
 ここが踏ん張りどころだ。盤石に見えるロシア国民のプーチンへの支持も、ロシアが劣勢になれば一挙に崩れかねない。強権によって築かれた権力は、意外にもろいということを歴史は証明している。ムッソリーニ然り、ヒトラー然りである。ただ、欧米の予想外であったのは、ロシアへの経済制裁が、思ったほどロシア経済を追い詰めていないということだ。それは、ロシアが天然資源の産出国であることと自給率が高いこと、そして制裁に参加しない中国・イラン・インドなどの国々との貿易が行われているからだ。しかし、ロシアの成長率が3.6%と言われているが、それも軍事経済体制に移行しての成果であり、ロシアの物価は高騰している。今、ロシアをもっと追い込めば、蟻の一穴から瓦解が始まる可能性がある。旧ソ連の国々もロシアを見捨てるだろう。これらの国々にとっては、ロシアは偉そうに上からモノを言う「目の上のたんこぶ」なのだから。ロシアが弱体すれば、もっと自律的な国家経営を行えると思っている。

 今、ウクライナへの支援は正念場だ。軍事専門家の小泉氏が言うように、戦争3年目だけではなく、4年目も見据えなければならない。小泉氏は、プーチンを打倒するのは「ソフトパワー」ではなく「ハードパワー」であると指摘する。すなわち軍事である。だから、欧米は、ウクライナを見捨ててはいけない。欧米がウクライナ支援で疲れているように、ロシアも侵攻で疲れているのだ。自分がしんどい時は、相手もしんどい。勝負事の基本だ。今こそ、軍事支援を強化し、ロシア国境で大規模な軍事訓練を行い、ロシアの軍事力を分散させなければならない。そうすると、益々プーチンは追い込まれる。そして核で威嚇してくるだろう。しかし、ロシア国民が、本気で「危ない」と感じたら、彼らも行動を起こすだろう。第三次世界大戦をロシア国民は望んでいないのだから。ウクライナからの撤退を求めた大統領候補に10万人以上の支持が集まったことが物語っている。ナワリヌイ氏への追悼が後を絶たないこともそうだ。

蟻の一穴をもたらす強大なハードパワーが必要だ。プーチンは北欧2か国のNATO加盟にビビっている。


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