11月6日の読売新聞地方版に面白い取り組みが紹介されていた。地方版なので、大阪府と違う地域では掲載されていないので、是非読んでほしい。何かというと、大阪市教育委員会が特別専科教諭の制度をスタートさせて、新任の小学校教諭382人のうち、非正規採用の講師の経験がない50人に、担任を年度途中まで持たせない取り組みを始めたのだ。つまり、年度途中まで副担任や授業補助として、実務経験を積んでもらうという取り組みである。
この取り組みの狙いは、新人の負担軽減にある。記事には、菅田教諭の場合が紹介されていた。「担任を持たないと知って当初は不安だったが、児童への個別指導といったサポートだけでも休まる時間がないとわかった。」という。
「いきなり担任を持つのとは違い、少しずつ慣れることができた。前任の先生から、夏休みにしっかり引き継ぎを受けられたのも安心」
とコメントしている。
これは、義務教育と高校の教育文化の違いだろう。大阪府立だけかもしれないが、新転任の先生にいきなり担任を持たせるような校内人事は、異例中の異例で、私は経験したことがない。たまに転勤してすぐに担任を持たなければならない先生がいたが、極めて少数だった。だから、1年間は、その学校の様子や担任のやり方を先輩などを背中を見ながらマスターしていくのが通常だった。いろんな先生のホームルーム経営や生徒指導のやり方を学ぶこともできた。だから、自分の担任のスタイルを十分に練る時間があったのだ。ところが、義務教育では、文化が違う。とにかく新任であろうが、転任であろうが、いきなり担任を持つという文化である。人事の制約の関係でこのような体制が必要ということもあるだろうが、担任を持たなかった場合、「担任を外された」と教師としてのプライドが傷つけられたと感じるようだ。義務教育と高校では、だいぶ教育文化が異なる。(年々、高校でも様々な事情で、異動していきなり担任を持つことが増えていき、現在では、異動してくる人を複数人あてにしないと担任が揃わないこともあり、珍しいことではなくなったと聞くが。)
しかし、考えてみれば、いきなり担任というのも無茶な話だ。民間で、いきなり取引先や窓口、さらに生産工程を一人で任されるようなもので、民間なら怖くてやってられない。先輩と一緒に取引先を回ったり研修を行う中で、仕事を一つ一つ覚えていくというのが民間のやり方だ。いきなり担任では、やらなければならないハードルが高く、離職する若手教員が後を絶たない。学校に求められる内容の質も量も増加している。保護者の要求水準も上がっている。そんな中で、若手の離職者を減らす一つの取組として参考になればよいと思う。
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