まずは事例集を!

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●3か月ほぼ毎夜9時~0時に来校し、異動した先生への不満を大きな声でまくしたてられた
●「学校のストレスで子どもが家の壁を蹴って穴を開けた」と家に呼びつけられた
●担任を外れて1年後に「あんたがちゃんとしてくれなかったから子どもが学校へ行けなくなった」と責められた
●「顧問が部活動を休みにしたせいで、子どもが街に繰り出して問題を起こした」と非難された
これは、6月30日の読売新聞3面に掲載された「保護者からの理不尽な要求や苦情」の例である。読売新聞は、公立学校共済の調査結果報告を受け、「保護者対応」が教員の重荷になっており、高ストレスや精神的休業の大きな要因になっていると詳しく報道した。読売新聞、よくやった!と褒めたいと思う。
 問題は、これらの「保護者ハラスメント」と言えるような事象に対して、どのような対処が求められるかである。文科省は今年度、校長OBらを「学校問題支援コーディネーター」として配置し、学校を支援するモデル事情を始めた。双方の言い分を聞いて解決策を練る仕事だ。家庭裁判所の調停委員のような仕事だろう。また、全国の都道府県には、39の都道府県で、スクールロイヤーが設置されている。
 
 さて、これらの取組の問題点である。
 まず、学校問題支援コーディネーターで解決するような問題なら、それ以前に解決しているのではないかと思うのだ。そして、この支援コーディネーターも校長OBなどが任命されることを考えると、最初からクレームを言う保護者には、「学校サイドの人間」と映るだろう。そう簡単にこの理不尽な保護者要求をコーディネーターが調停できるとは思わない。元々、要求自体が理不尽なのであるから、管理職や教育行政が、「その要求はのめない」ときちんとはねつければ良いのだ。それで相手が、「それなら出るところに出ましょう!」というなら、「望むところです!」と応じればよい。このことを恐れるがあまり、いくらでも付け込まれるのだ。この制度、あまり効果は発揮しないだろう。
 スクールロイヤーは、もっと拡充してほしい。今は、都道府県レベルでの配置になっているが、市町村レベルの基礎自治体に配置されるまで拡充してほしいと思う。例えば、最初に示した事例の「3か月ほぼ毎夜9時~0時に来校し・・・」というのは、明らかに威力業務妨害である。こういう法的な判断をしっかりとスクールロイヤーにやってもらうことが大事だ。そして、自信をもって管理職も教員も対処できるようになれば良いと思う。ところが、文科省はカネがない。基礎自治体レベルにスクールロイヤー配置なんて、夢のまた夢である。

 そうすれば、どうしたらよいか。
 まずは、学校現場で起こっている「保護者の理不尽な要求」について、事例集を作成すること。そして、それぞれの事例に関する法的側面、教育的側面から、見解と対処を文科省が示すことである。そして、教員向けのマニュアルと保護者向けの理解促進のための資料を作成し、保護者向け文書は、公にする。各学校から配布すれば良い。PTAでも配布し、保護者に理解を求めれば良い。できれば、その事例集に沿った実際に各学校で起こった理不尽な要求を共有すればよい。そうすれば、何が理不尽で、何が不当かということが明らかになる。
 これは企業が行っている「カスハラ対策」と同じだ。まずは、姿勢を明確にするというが大事だ。それを文科省がやるべきである。「学校問題支援コーディネーター」では生ぬるい。そして、この事例集を作成するぐらいは、そんなにコストが掛からないだろう。費用対効果も大きいと思う。是非、事例集を作成してほしい。

これを読んだ教育長さんは、是非とも文科省に要求してほしいものだ。


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