先週の『あんぱん』、「海と涙と私と」では、のぶと嵩のすれ違いが描かれた。電話でケンカしてしまったのぶと嵩も、嵩の帰郷で仲直りすると思われたが、嵩がのぶにプレゼントしようと思っていた赤いバッグを巡って、決定的な相違、それも生き方の相違に至るような喧嘩をしてしまった。この週を見ていると、教育の怖さというものを思い知らされる。
のぶは、高等女子師範学校で忠君愛国をモットーとする黒井先生に教わる。友人の小川さんがどんどん成長する中、のぶも戦地に赴く兵隊さんの慰問袋作成のための募金を始めることで、「愛国の鑑」と称えられ、黒井先生からも評価される。そして、のぶも忠君愛国という生き方を自らの生き方としようとする。だから、嵩が買ってきたバッグを見て、「美しい」と思いつつ、「こんな贅沢なものは、受け取れない。嵩も募金したらいい」と突っ返す。嵩の感謝の気持ちを素直に受け取れないほど、忠君愛国がしみ込んでいるのだ。昔ののぶならば、「たまるか!」と言って、素直に喜んだのではないだろうか。それが、忠君愛国というフィルターを通してしか物事を見ることができなくなっているとは、まさに黒井先生の教育の結果である。
一方、嵩は東京の学校に入学し、自由な発想を大事にする、そして軍国主義に批判的な座間先生に出会う。東京の自由な雰囲気(おそらく大正デモクラシーの延長だろう)も相まって、嵩の良さがどんどん開花していく。初めてじゃないかと思うのは、のぶが言ったことに反論したことだ。「美しいものを美しいと言えないことは、僕は嫌だ。のぶちゃんが先生になったら、子どもたちにそんな風に教えるの?そんな先生は、僕は嫌いだ」という発言だ。これは、二人の生き方が、決定的に違うようになってしまったという事だろう。嵩にも大きな影響を与えるのは、やはり座間先生である。
まさに、 The personal is political ではないかと思うのだが、どうだろう。
やがて、二人の生き方は交錯し、二人は結ばれることは知っていても、まだまだ先の話だろう。のぶは教師になり、やがて嵩も兵隊にとられる。今後の二人の生き方に注目したい。
それにしても、教育の力は大きい。
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