これでは教訓化できない


 12月15日の読売新聞の社会面に小さく、中3生の自殺の記事が出ていた。読んでみると、担任の女性教諭の不適切な指導が原因として損害賠償請求を鹿児島地裁に起こした。不適切といわれる指導はこうだ。2018年9月3日に、職員室で夏休みの宿題の一部を提出しなかったとして生徒を大声で叱責し、宿題を取りに帰るように指導。自宅に戻った生徒は首をつって自殺した。遺族は、この生徒に対して次のように主張している。「生徒は日頃から、どなり声をあげて指導する教諭に強いストレスを感じており、この指導で精神的に追い詰められた」と。教育委員会も「指導が引き金になった可能性が高い」と判断し、教諭を戒告の懲戒処分している。

 以下、教訓化するために必要な点を整理したい。
①懲戒処分を受けているので、「大声の指導」があったのは事実なのだろうが、どの程度の指導だったのか。この生徒への指導の妥当性を欠いたということだろうが、どの程度欠いたと言えるのか。
②担任の女性教諭は、なぜ大声を出して指導をしたのか?担任だから生徒の特性は把握していたと思われるが、どの程度の理解だったのか。この事案の前にも、同じような事案があったのか。それとも偶々この時に大声での指導が起こったのか。
③仮に、大声の指導が不適切に行われたとしたら、周囲の教師はなぜ止めなかったのか。職員室で行われているわけだから、教頭も含め他の教師も席にいるはずである。見て見ぬふりをしたのか。見て見ぬふりをしたなら、この学校の教職員集団は、どういう質を持っているのか。

この点を明らかにしないと、この自死事案を教訓化できないと思う。紙面に限りがあるとはいえ、もう少し突っ込んだ取材をしてほしいと思うが、無理なのだろうか。生徒の命が失われているのである。


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