以下に示す事例を、どのように扱うのが良いのか皆さんの意見を聞きたいと思う。
舞台は中学校である。中学校に入学したある女子生徒は、部活動に参加した。当初は、同じ1年生の部員とコミュニケーションをとり、仲良く学校生活を送っていた。ところが、だんだんと周囲の部員が、その女子生徒から距離をとるようになる。それは、この女子生徒が、常に自分の推しであるアイドルの話をして、周りの部員の話を聞かない。グループで別の話をしていても、すぐに自分の推しであるアイドルの話を持ち出し、その話を続けるというのが理由だ。
疎遠にされた女子生徒は、自分が仲間外れにされていると感じ、いじめに遭っていると思って、学校から足が遠のくようになってしまった。心配した親は、学校に相談する。担任及び部活の顧問も周囲の生徒に事情を確認する。そうすると、女子生徒のコミュニケーションの取り方に問題があり、一概に周囲の生徒が無視しているわけではなく、女子生徒との関係がしんどくなっていることがわかる。
以上のような状況を保護者に話をするが、保護者は納得しない。あくまでも自分の子どもが集団から疎外され、いじめられていると主張する。親子共々、いじめられていると思っているので事態は解決せず、欠席日数は増し、いじめ重大事案にまで発展した。
さて、現在のいじめに関する法律では、「本人がいじめと認識すれば、いじめとなる」という定義である。明らかにこの事例もいじめ問題として取り上げられることになる。ただし、重大事案であるので、第三者委員会の調査を待っていじめの事実認定が行われることになるが、このような事態に至るまでに何とかならないのかと思ってしまうのだ。
例えば、以下のようなことが考えられる。
想定1
女子グループ内で当該生徒のコミュニケーションの取り方について、やんわりと注意をして、当該生徒の理解を得る。
想定2
グループ内で当該生徒の理解を得るために問題提起をしても理解が得られず、同じように推し活の話をするので、女子グループが教師に相談する。相談された教師は、当該女子生徒にコミュニケーションの取り方について、「相手の話もきちんと聞くことが大事」と指導する。
想定3
それでも改善しないので、担任・部活顧問が保護者と話をし、保護者から当該生徒に話をしてもらう。
というものだ。しかし、これらの想定した働きかけを行ったとしても親子共々「これはいじめである」と主張したら、どうなるのだろう。例えば、第三者委員会がいじめと認定しなければ、保護者も本人も納得せず、裁判になるかもしれない。
想定1を実行した場合、生徒は自分のコミュニケーションの取り方に問題があることに気づくだろう。想定2の場合も想定3の場合も、同様だ。自分に原因があるとどこかで気づくだろう。そのことに気付かず、重大事案にまでなってしまったということは、この当該生徒の発達に何らかの問題があったことが考えられる。現場の教師たちは、その問題にうすうす気づくだろう。だが、法律上は「いじめ」である。
法律と学校現場の矛盾。この矛盾にどのように対処すればよいのだろうか?

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