いじめも不登校も増加

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  いじめ・不登校が増加しているということが、文科省の調査結果で明らかになった。2013年度の10年前よりも次に示すように大きく変化した。
  いじめの認知   185,803件→681,948件(3.7倍)
  いじめの重大事態   179件→  923件(5.2倍)
  いじめ認知の学校   51.8%→ 82.1%(30.3%増)
  ネットいじめ     8,788件→23,920件(2.7倍)

 いじめに関する定義が変化したり、認知度が浸透したために「いじめの認知」は10年前の3.7倍になった。問題は、「いじめの重大事態」が10年前の5.2倍になっていること、そしてその重大事態のうち4割については、深刻な被害が生じるまで、学校がいじめとして捉えていなかったということだろう。この事態についていくつか指摘したい。

 大津市のいじめ事案をきっかけにいじめ防止対策推進法が施行されたが、いっこうにいじめが減らない。逆に増えている。いじめの定義が厳格化されたために、被害を受けている児童・生徒が「いじめである」と訴えれば「いじめ」と認定されるようになった。いじめを見逃さないための施策としては理解できるが、副作用も出ている。成長過程にある児童・生徒の間では、その成長過程特有のトラブルも発生する。クラスの人間関係やちょっとした友人との行き違いなどで人間関係がおかしくなることもある。自らのアイデンティティが確立していく過程の中で、友人関係も変わってくるだろう。そういう変化の中で起こるトラブルとも言えないような人間関係の変化も、「いじめ」と訴えればいじめになる。過保護な保護者も増え、ちょっとしたトラブルを大事に捉えてしまうため、さらに事態をややこしくすることもしばしば起こる。「子どものケンカに親は口出しするな」は、とうの昔に死語になった。親も教師も、いじめか人間関係のトラブルか、このあたりの微妙なところを見極める力も必要だろう。何でもかんでも「いじめ、いじめ」と大騒ぎすることは自粛した方が良いとも思う。
 深刻な問題は、重大事案の増加の方だ。本来は、この重大事案を無くすことに注力しなければならない。まず、ネット上のいじめがSNSの普及などで急増している。この事象は、大人には中々わかりづらい。さらに、いじめの対象になっている児童・生徒は、自らがその対象になっていることを隠そうとする。だから、余計にわかりづらくなる。だから、親も教師もちょっとした子どもの変化に注意を払わなければならない。しかしながら、読売新聞には、こんなコメントが載っていた。

「児童に気になる様子があっても、いじめの現場を目にしない限りは、授業準備などの業務を優先してしまう」
母親が面談を求めても、担任教員は「時間が取れない」と応じず、学校はいじめを認めなかった

ちょっと待てと言いたい。学校現場が忙しいの十分は理解している。しかし、気になる子どもがいるのに、声をかける時間もない程、親が相談を求めているのに拒否するほど、忙しいのかと言いたい。優先順位がわかっているのかと言いたい。1時間も2時間も子どもと話をしなければならないのでは、もう深刻化している。気になる児童・生徒がいたら、休み時間に「元気か?」「大丈夫か?」と声をかけることぐらいは、簡単にできる。子どもがどんな返事をどんな表情で返すかで、子どもの様子がある程度知れる。そんなことができるのが、教員免許を持つプロの教師だろう。その時の子どもの反応によっては、「一度、ゆっくり話しないか?」「気にしていることがあるけど、今度話しないか?今でなくてよいよ」と声をかけるだけで、子どもは「先生は見てくれている」「気にしてくれている」と思うだろう。そんな声掛けをする時間も無いと言うなら、もうその学校は、学校としての機能を十分に果たせていないか、自らの能力不足を自覚すべきではないかと思う。

広く、細かくいじめを捉えることも大事だが、いじめを深刻化させないことの方が、もっと大事ではないか。


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