「本・新聞を読まない」学生2割

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 9月2日の読売新聞2面に、東京大学酒井邦嘉教授らの研究チームの調査結果が掲載されていた。学生の読み書きに関する実態調査である。調査は、18歳から29歳の大学生・大学院生・短大生を対象に1062人に実施されている。

 調査結果によると、大学などの講義内容を記録しない学生が1割、本・新聞・雑誌いずれも普段読まない学生が2割に上ったという。回答者の一部を対象に日本漢字能力検定協会の「文章読解・作成能力検定」準2級の問題を出した。その結果、講義内容を記録する学生の正答率が57%だったのに対し、記録しない学生は32%で大きく下回ったという。研究チームは、この結果を「図や分掌の内容をほとんど理解できていない」水準と評価している。

 この結果を受けて、そして最近の学力学習状況調査の結果もそうなのだが、日本の若者の学力水準が低下傾向にあるのではないかと懸念している。通信制に通う生徒が10人に1人という事態、不登校生徒の増加傾向が止まらないなど、大丈夫かと思うことが多いのだ。
 日本の一人当たりの労働生産性は、OECD38か国中32位である。日本人の一人一人の労働生産性を高めなければならないと言われながら、一人一人の学力が低下傾向になれば生産性も高まらないだろう。1960年代からの日本の高度経済成長は、均質で質の高い労働力によって支えられてきた。現在、その均質で質の高い労働力に加えて、新しい価値を産み出す創造力というものが必要とされている。しかし、このようなデータが出てくると、前提となる「均質で質の高い」という部分が心許ない。

 大学全入時代を迎えている現在、大学の有り方も根本的に変える必要があるのではないか。今、私立大学では、学校推薦型入試(以前の指定校推薦)や総合選抜型入試(以前のAO入試)で定員の多くを確保しようとしている。ほぼ無試験といってよいような状況だ。調査結果のように、大学で学ばずに社会に出るようであれば、高校でも大学入試の学力試験の勉強をせずに大学に入り、大学でも勉強せずに社会に出るようになる。大学の卒業判定を欧米のように厳しくするというのもありではないか。そうすることにより、就職状況を改善すれば、また学生も集まるようにも思う。

 とにかく、日本の学生・生徒の学力状況が下降傾向だということに、将来に対して大きな不安を感じる。


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