「撤退」という選択肢はないのか?


 連日、自民党の総裁選に関する報道がなされている。様々なところ、様々なテレビ局で討論会が実施され、段々各候補「色」が出てきたように思う。候補者の話を聞いていると、「なぜ、いまそれを言う?」ということがある。特に「政治とカネ」の問題についてだ。いまそれを言うなら、なぜあれほど議論になっている最中に言わないのかと、率直に思うところがある。しかし、少し考えると、「言えなかった」のだろうという結論になる。岸田首相が指し示すことの枠を超えて、発言することは差し控えるという雰囲気があったのだろうと思う。逆に言うと、それほど「総理のリーダーシップ」というのが大切で影響が大きいということだろう。今、派閥も無くなり、総理も内閣の大臣に「遠慮なく手を挙げてくれ」といった環境の下では、候補者に対して真に政治家としての能力・資質が問われるのだろう。また、自民党議員や自民党員もその資質が問われることになる。「親分の言う通り」とはいかないのだ。
 立憲民主党の代表選も同時に行われるが、立憲民主党の議論は、「対自民」を念頭に置いているので、各候補者の発言にさほど大きな違いが感じられない。もっと丁々発止の議論を展開すればいいのにと思ってしまう。それに比べて、自民党の総裁選の方が、候補者の政策の違いがいろいろと出てきて面白いと思うのだ。総裁選まで2週間足らず。これから様々な論戦が交わされるであろうが、論戦が白熱することを期待したい。

 ご存じのように、9名も立候補をすると、決選投票にもつれ込むことは必至だ。土曜日の「正義のみかた」でジャーナリストの青山氏は、5人の候補者の名前を挙げた。小泉氏、石破氏、高市氏に加え、小林氏、上川氏である。小泉氏は菅さんがバックにいることで議員票が伸びているらしい。しかし、党員票が伸びない。意外かもしれないが、国民に近い党員の感覚なのだろう。「解雇規制の緩和」などは、国民にとっては死活問題になる。自民党員と言えども、全員が経営者ではないのだ。未組織の労働者も相当いる。この人たちにとっては、大きな問題なのである。「夫婦別姓選択制」の問題は、保守かリベラルかを分ける試金石となっているが、やはり自民党員には保守層が多いのだろう。こんなこともあって、小泉氏の党員票が伸びていないのだ。その逆が石破氏である。小林氏は、討論を通じて、「なかなか良いことを言うではないか」と指示が広がっているし、議員も4回生議員以下は、小林氏支持らしい。
 この間、急速に党員票を伸ばしてきたのが高市氏らしい。討論を聞いていても、政策に明るい。毅然とした覚悟を感じる。やるべきことは逃げずにきちんとやりきるということを思わせる人だ。上川氏は、立候補が最後になったが、安定感で指示を拡大しているという。どうも、小泉・石破・小林・高市・上川の5人に絞られてきたようだ。そこで思うのだが、アメリカの大統領選のように、「撤退」という選択肢はないのかということだ。決選投票に残るのは、二人である。世論調査で支持の低い他の4人については、決選投票に残る可能性も少ない。決選投票で、合従連衡が行われ、何か政治的な判断で2位の候補が逆転で勝利ということもしばしば起こる自民党総裁選である。国民には分かりにくい。最後は、議員の好き嫌いか!と思ってしまったりするのだ。それならば、来週あたりから、投票の前に「総裁選から撤退し、〇〇候補を支持する。支持する理由は、×××だ」というのもありだろう。総裁選候補に名前の挙がっていた野田氏は、推薦人20人の壁を越えられず、立候補を断念した。その際、小泉氏支持を打ち出したのだ。こんなことがあっても良いのではないかと思うのだが、まあ、党員ではない私には投票権も無いし、日本の総理が選ばれるというのに、他人事でしかない。

 決選投票が誰と誰で行われるのか、全く予想できないが、もし、その中に小泉氏がおり、彼が国会議員票を集めて総裁に当選したら、国民はこう見るだろう。
「自民党議員は、自分の選挙の事しか考えていない。小泉総理なら選挙に勝てると考えているのだろう」と。国民は馬鹿ではない。そんな議員心理はお見通しだ。選挙に勝つために小泉氏を選んで、小泉氏で負けるということだって有りうるのだ。


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