「成瀬は都を駆け抜ける」を電車の時間3日間で読み終えた。「成瀬は天下を取りに行く」から始まったこの「成瀬シリーズ」も今回が完結編だという。誠に惜しい。まだ、読んでいない人も多いと思うので、このブログもできる限りネタバレにならないように書いてみたい。
まず、主人公成瀬だが、明らかにギフテッドだ。滋賀県№1の膳所高校にすんなり入るし、京大にも一発合格である。秀才で努力家なら実現可能かもしれないが、それをすんなりとやってしまう成瀬は、ギフテッドと言って間違いないだろう。更に付け加えると、成瀬は特異な才能というよりは、あらゆる面でずば抜けた才能を持っているようだ。小さいころから獲得した賞状はあまた知れずという状態なのだ。
更に、成瀬は常に正しい考えを取る。「琵琶湖の水は、みんなのもの」というのも彼女の口癖だ。近くのパトロールを続けているのも、治安が良くなればみんなが住みやすくなるという考えだ。数々ある彼女のエピソードも、世の中的に考えて正しい判断基準から出ている。そこに成瀬の利己的な考えが入る余地が無い。一般人は利己的な考えが入るので、行動を起こすまでに迷いが生じる。しかし、成瀬には利己的な考えが入る余地が無いから、彼女の行動は、突飛に見えてしまう。一般人には思いつかない行動をするのだ。
また、成瀬は常に相手の事も考慮して行動したり発言したりする。だから、成瀬は誰からも好かれるし、みんなから注目を浴びる。彼女の行動に私利私欲が無いのである。だから、安心して周囲の人間は成瀬を信頼するのだ。
今回で成瀬シリーズは完結だと作者は言う。しかし、話題はまだまだあるだろう。ある意味、変わった人間が集まるであろう京大だから、成瀬は成瀬のままで大学に受け入れられた。しかし、ギフテッドの子どもや大人は生きづらいのだ。成瀬の小学校時代に、三者懇談で担任から皮肉を言われる(ネタバレ)場面が出てくる。これで済めばよいが、通常ギフテッドの子どもは、いじめに遭う可能性が高い。小学校時代の成瀬はどうだったのか。いじめに遭わなかったのか、島崎とのかかわりはどうだったのか。興味が湧いてくる。
成瀬は、恋愛感情を持つのだろうか。かるた大会で成瀬に一目ぼれした広島県の西浦は、成瀬に会いたくて京都の大学に進学した(ネタバレ)。何度かコンタクトがあるようだが、成瀬が西浦の事をどのように思っているのか、好意を持っているのか、それとも友達の一人なのか、西浦との関係は発展するのか、成瀬はどんな人物を好きになるのか。これについても興味が尽きない。
そして、社会人になった成瀬はどんな仕事をするのか。このままいけば、社会で通用するのかどうか不安になる。一番適しているのは、研究者のようでもある。今話題のノーベル賞を取るような研究をするのではないかと勝手に想像してしまう。成瀬のことだ、とんでもない発明や発見をするのではないか。成瀬曰く、「世のため、人のための研究だ!」と胸を張るのではないか。
成瀬シリーズ、完結するにはあまりにも惜しい気がする。

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