「変わる部活動ー経験者の思い」・・・いったい何を伝えたかったのか?


 前回紹介した読売新聞連載の「変わる部活動‐経験者の思い」が連載5回で終了した。何か、面白い記事、ためになる記事を掲載してくれるのかと期待していただけに、肩透かしもよい所だ。取材対象であった青山学院大陸上部の原監督が現在進められている取り組みと、大久保嘉人元サッカー日本代表の国見地区での経験も、まるで正反対である。
 原監督は、「スポーツでしか通用しない経験だとしたら、何のためにスポーツをするのか。」と大きな疑問を持ち、一人一人が考えて(これが重要)目標を達成する強化計画を考えさせる指導をしている。計画力や分析力を磨き、社会に出たときに役立つ力を育成しようとしている。その真逆が大久保氏の体験だ。ひたすらグラウンドを走らされたという。「何のために・・・」である。部員一人一人がその練習も意義と意味を理解していなければ、成長も促されない。「上からの押し付け」の指導である。しかし、大久保氏は、その指導を有難く思っている。監督の口癖は「3年間よりその後の人生の方が長い」だったらしく、あいさつや周囲への配慮の大切さを教えてくれたという。典型的な運動系クラブの指導だろう。

 この連載を担当した3人の記者(岡田浩幸氏、平野和彦氏、細田一歩氏)は、現在がポストモダン、VUCAの時代であることをきちんと認識していないのではないか。この時代に最も必要なことは、自ら問題を発見し、その問題を解決するための方策を考え、その解決を協働で実現する力である。このように考えたときに、原監督の指導方法は、VUCAの時代に対応した理に適った指導方法である。しかし、大久保氏が経験した国見地区での指導は、いわゆる「体育会系の根性と忍耐」がある人材を育成するだけで、VUCAの時代には対応しきれない。このことを主題に「変わる部活動」を掲載すべきではなかったか。
 
 部活動は、確かに変わらなければならない。指導者の意識はもちろんのこと、生徒や保護者の意識も変わらなければならない。もう、指示を上から押し付けるような「カリスマ指導者」は要らないだろう。原監督の指導のように、「自らの頭で考えることができる」部活動でなければならない。そのためのコーチング技術は、非常に重要である。生徒や保護者も何のために部活動をしているのか、何を指導者に求めるのか、もっと頭を使わなければならないだろう。


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