「ノモンハンの夏」(半藤一利著)


 今、「ノモンハンの夏」を読んでいる。読み始めたきっかけは、NHKの関西地区限定で放映されている司馬遼太郎生誕100年の記念再放送「昭和への道」の第1回「なにが魔法をかけたのか」の中で、司馬さんがノモンハン事件について語っていたからである。司馬さんは、「日本はなんて愚かな戦争をしたのか。しかし、このノモンハン事件については、日本人はあまり多くを知らない。是非とも知るべき」という趣旨を述べていた。司馬さんは、晩年にこのノモンハン事件を小説にすべく取材を行った。ところが、取材を重ねれば重ねるほど、このテーマを小説化する意欲を無くしていったと告白している。それほど、書くに値しないほど馬鹿げた事件だったのだろう。
 「ノモンハン事件」と書いたが、「事件」ではなく当時のソ連と日本の間で起こった国境線を巡る紛争(というより戦争に近い)である。日本は満州に展開してきた関東軍が総力戦で戦い、多大な被害を出している。当時は、この悲劇とも言うべき惨敗が日本国内でほとんど報道されなかったらしい。
 司馬さんはこのテーマを小説化しなかったが、「やはり日本人として、この過去の失敗は知るべきだろう」と考え、何を読もうか本を探した。そうすると、当時司馬さんと取材を共にした半藤一利氏が、「司馬さんが書かないなら、自分が書くべき」と思い、書いた本を見つけた。それが「ノモンハンの夏」である。半分を超えるところまで読んだ。ここまで読んで司馬さんが「なんと馬鹿な日本人がいたものだ」と思い、小説に値しないと結論付けたのか、その理由がよくわかる。関東軍参謀辻正信、こいつは本当に夜郎自大である。詳しくは、読み終えたときにコメントしたいが、読むのが馬鹿らしくなるほど、意味がない男である。こんな男をテーマに、半藤氏は「よく一冊の本にまとめたな、さぞかし苦痛だったろう」と思った。辻参謀や関東軍参謀の事を記述しているところで、半藤氏も「書くのが馬鹿らしくなる」と心情を時々吐露している。

 こんな馬鹿な男もいて、それも陸軍エリートにいたことを踏まえて、最後まで頑張って読んでみたいと思う。


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