「おむすび」と「おかえりモネ」


 今放送されている朝ドラ、「おむすび」について、どうしても違和感を持ってしまう。福岡県の糸島市でスタートしたこのドラマだが、ギャル魂がテーマになっている。しかし、それにしても軽い。これは前作の「虎に翼」とどうしても比較してしまうので、重と軽があまりにも鮮明になってしまっていて、余計にそう思ってしまう。舞台が神戸に移って、ようやくこの朝ドラの真のテーマが「阪神淡路大震災30年」ということなのだな、というのが見えてきた。結の姉の歩の親友の真紀ちゃんが亡くなり、失望の中で暮らす緒方直人が演じるなべさん。歩もなべさんも迫真の演技をしている。しかし、何か違和感がある。それは何かと考えると、やはりシナリオのリアリズムではないかと思う。もっと丁寧に描くべきところが描けていないのだ。例えば、震災後なべさんが突然アーケードの設置に積極的になる場面。あまりにも唐突である。後ほどこれが真紀ちゃんの希望だったとわかるが、真紀ちゃんの希望を叶えようとするなべさんの思いが十分に描かれていない。だから、その後のなべさんの姿にも、違和感を覚えてしまうのだ。

 ところで、震災をベースにした朝ドラと言えば、「おかえりモネ」があった。この朝ドラでは、地震も津波も描かれていなかった。しかし、この震災が、人々の心にどれだけ大きな傷を与えたかは、モネの親友である及川(永瀬蓮)とその父親(浅野忠信)の姿を通して描かれていた。この親子の葛藤に何回涙したかわからない。涙するとは、共感するがゆえに心が震えるのだ。「おむすび」でベーカリーを経営する美佐江さんとなべさんはケンカ状態だ。その理由も語られる。「美佐江さん、そうなんだ・・・」と思うが、涙するまでにはならない。なぜか。美佐江さんの背景が十分に描かれていないからだ。それに輪をかけて、結の「軽さ」があるからだろう。

 「おむすび」と「おかえりモネ」、どちらも大きな震災をベースに描かれたドラマだが、これほど違うのかと考えさせられる。


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